『うまくやる』(熊野森人/あさ出版)の行間で泣く。

2008年1月、新宿東口の珈琲らんぶるで熊野くんにカタルタの試作品を見てもらった。あれから12年の歳月が流れ、僕はカタルタで暮らしを立て、熊野くんはクリエイティブディレクターと大学講師をやっている。先日、彼は初の著書を出版した。タイトルが「うまくやる」で一瞬戸惑った。「バカ」と一緒で使われ方次第の言葉だからだ。実際、本を持って街を歩くとき少し恥ずかしかったのは、特製ノベルティーの表紙に書かれた「フクモッコリ」の方ではなく「うまくやる」の方だったのを僕の心のセンサーは見逃さなかった。ははーんあいつさてはうまくやろうとしてるのだな的な架空の視線を感じたというわけだ。そしてカフェに入り本を開くと、そんな自意識を見透かしたかのようにトホホな日常とそれでも何かを発すべき状況の折り合いの付け方がレクチャーされている。語り口こそ柔らかくユーモラスだけれど、この本はバリバリの、しかし等身大のサバイバル・ガイドなのだった。ところで、出版されるまで知らなかったことだけれど、カタルタについて4ページも割いてもらっている。僕には熊野くんとの歴史があるからその4ページを始めとしたあちこちのテキストで泣けてしまう。が、みなさんは特に泣けないと思う。だから11月13日六本松蔦屋書店の出版イベントの客席でみんなが笑うところ、一人だけ泣いてるおっさんを見かけたらそれは僕なので話しかけずにそっとしておいてください。